修験道宗・三重院

2008年02月11日

 良く眠れた三重院での三日目の朝。
シャキッと5時に起きて、6時からの勤行に備える。階下では住職夫妻が寝ているので、あまり早く起きすぎないようにと、副住職に云われていた。
物音を立てないように、静かに外階段を下りて行き冷たい水で顔を洗ってスッキリする。気持ちのいい、清々しい夜明けだ。

勤行の支度も手馴れてきた。本堂の灯りを点け、ストーブを焚き、灯明をご本尊と供養棚に灯し、小さな線香を四本それぞれに分ける。ご本尊は線香も灯明も大きい物を使用する。出るときには、灯明を消しストーブを消し、三つある卓の上を整理しピシッと揃える。・・もう、住職に注意されることも無くなった。

朝の勤行は、副住職も我々と同じ側に坐し、住職が主役を勤める。相変わらず迫力ある勤行だ。九字の切り方一つとっても気合が漲っている。恩年お幾つぐらいだろうか・・子息の副住職が自分と同い年だから、還暦はとうに越えていよう。お寺さんで晩婚なら相当のご年齢ではないか。微塵も感じさせない力強さを感じる。これが修験道を極めた方のオーラか。


食事が出来るまで食堂で待っていると毎朝、住職が神棚と仏壇にお供え物をあげに来る。ぼぉっと見ていてもナンなので、一緒に合掌し拝む。こんな時の住職の物腰は殊更に腰が低く且つ穏やかである。
「失礼・・」我々、にわか修行者の前を横切るのに何の遠慮や礼儀が必要だろうか?なのに、礼を尽くして下さる。更に合掌し、共に「南無阿弥陀仏」を唱えると、振り向いて「ありがとう」と言って下さる。そんな本当の意味での、高僧なる人格者を目の当たりにすると、自分が小さくまだまだカスのようにも思える。

03c41a27.jpg これは、食堂にある神棚に貼ってある紙。
「五恩」と書かれた題目には、「一、天地」「二、国王」「三、産土」「四、父母」「五、諸人」とある。それぞれに手を合わせ、それぞれに感謝する気持ちが大事だと教えられた。更に修験宗では、神鏡の中に自分を映し出し、大日如来を見出す。つまり御仏との意思疎通、チャネリング=即身成仏をおっしゃっているのだと解釈した。
余談だが、この「本山修験宗 三重院」は、天台宗系の修験宗である。

ナンじゃそりゃ? と、思われる方もいらっしゃるだろう。自分も住職に初めてお伺いしたとき、ん?・・と、思ったが確かに、密教に極めて互換性や共通点が多いのも、それらを学びとると一気に納得が出来た。実は弘法大師よりも100年以上も早く、密教(厳密には雑密と呼ばれる)を継承している役小角に端を発する。
長い修験宗の歴史の中で、現在は大別すると「本山派=台密(天台宗)」「当山派=東密(真言宗)」の二派に分かれている。雑密や修験道の沿革などについては、別の機会か備忘録にて詳しく述べたいので、ここでは割愛させて貰う。


朝食のあと、作務(今回は清掃修行)に入った。
副住職からは、「単なる作業と思わぬように」との前置きがあり、作務とはただ掃除すれば良いことではなく、感謝の気持ちを伴わせることに意義があると説明された。
まずは、屋根から落ちた雪が跳ねて汚れた、寺務所の玄関や雨戸を、バケツに水を汲み雑巾で拭き掃除した。副住職も我々と変わらず一緒に作務を行なう。近頃、「和物」が見直されトレンド化している。若いコたちの間でも、和柄のジーンズやTシャツは良く売れている。さすがに作務衣を着ている若いコはあまり見かけないが、作務衣とは作務(作業)する作業着のことを指す。全てのブランド服を捨てた自分は、ここ半年以上、ほとんど毎日パジャマと作務衣しか着ていない(笑。

続いて、本堂のガラス扉や格子も拭き上げた。物がキレイになるのは気持ちが良い。掃除は嫌いでは無い方だ、副住職の言葉を噛み締めながら一生懸命やった。食堂や二階の寝床も掃除機を掛け、二時間ほどで終了。副住職は指示と手本だけ見せるのではなく、最後の最後まで共に作務修行をこなした。


 清掃された本堂で昼の勤行を終え、修行の感想文を書くように言われた。汚い字だがありのまま感じた気持ちを綴って渡した。昼食の時間が近づいたので、食堂へ向かい食膳を運ぼうとすると、副住職が「もう修行は終わったからいいよ」とおっしゃる。だが、自分達が食べる物だ。民宿ではないので甘えるワケには行かない。修行を終え得度してらっしゃる奥様(妙清先生)に、「手伝わせて下さい」と、いつもと変わらず食膳を用意した。満行のお祝いに日本酒をご馳走になった。一合徳利が空になるまで、副住職が酌をして下さった。

これで、今回の修行はお終い。
「え?」 と、賢明な読者さんは思われただろうか?
「オイオイ、滝修行はどうなったんじゃい?」

▼それはですね・・
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2008年02月10日

 〜マントラの続き〜
 ううん、やはり巧くいかない。副住職から、「ここでは、修験宗で定められたご真言に従ってくれ」と釘を刺されたが、意識すればするほどフン詰まりになって、どもってしまう。このままじゃ夜明けまでに終わらない。

マントラは自意識から遠のいた瞬間から、スピードが増してくる。有意識(顕在意識)つまり左脳の中では、スピードに限界がある。
いよいよイライラしてきて、云い慣れた真言宗のご真言に切り替えた。やはり慣れたもので、あっという右脳が動き出してスピードアップして行った。

気分が良くなるとしめたもの。徐々に修験宗式のご真言を前半に加えて慣れていく。違うのは冒頭だけだが、そこへ意識をやること自体、左脳が働き後半までガタガタになってしまう。始めはスピードを緩めたり早めたり、区切る場所を変えたりと、慣れるまで色々工夫を凝らした。

〜ちょっと脱線〜
491cbedd.jpg  そうそう今回、副住職に数珠でマントラ(真言)を数える方法を伝授して貰った。
まぁ考えりゃ分かりそうなモンだが、ちゃんと習ったことがなく、未だに虚空蔵求聞持法はMade inダイソーのカウンターを使っていた。それを副住職に話すと、「数珠で数えようよ〜」と云われた(笑。

早速、知らない方へもシェアしよう。
数珠で真言を数える方法は、人差し指と中指の間に数珠を通し、他の指は合掌するように立てて、右手の親指と人差し指だけで右から左へ数えて送る。
数珠の由来は諸説あるが、元来読んで字の如く、数を数える物だったらしく、また珠の数は「煩悩の百八」と同じというのは、どなたも良くご存知であろうが、実は108ではないと知っていただろうか?自分も全部で108だと思い込んでいた。
宗派によって多少形状が違うが、正式な百八数珠なら珠の数は同じだと思う。いい機会だから、ご自分の数珠の数を数えてみられてはいかがであろう。


〜どんどん脱線(笑〜
346aae43.jpg ハイ、それでは数珠を用意出来ましたか?
ついでなので、数珠の各部名称と意味も覚えちゃいましょう。まず、弟子珠と呼ばれる房の根元にひと際大きな珠がある、それが二つ対になって母珠と呼ばれる。どちらか片方の母珠から、7つ数えたあとに少し小さな珠(四天珠)がある。
そちらを表房と云う。次に、その四天珠を飛ばして、二つ目の四天珠まで21。そして、反対側の母珠までで54。かける2で108だ。つまり、母珠2個と四天珠4個を足すと全部で114コある。
真言や経を唱える時、7遍や21遍が多いから、この四天珠を目安に数える。

数珠の名称と各部位の意味
母珠(親玉)・・『釈迦如来』『阿弥陀如来』を表す。
主珠・・108の玉。『百八尊』『百八煩悩』を表す。
四天珠・・『四天王』『四菩薩』を表す。
弟子珠・・(記子玉) 房につく小玉(片側10個づつ)日蓮宗のみ計40個
『十大弟子と十波羅密』と『十大弟子と十菩薩』を 表す。
露玉・・(記子留)弟子玉の下に着く露型の玉。

マントラの場合、母珠と四天珠を飛ばして一巡して百とする。(ホントは、108なんだけど・・)細かいことを言えば、一万遍唱えると800回余分に数えたことになる。足りないよりは多いほうが良かろう。因みに、一巡(百回数えたら)したら、弟子玉を画像のように一つ下げて行き、全部下がったら反対側の弟子珠を一つ上げる。これで千回、全て上がれば一万回。なるほど旨く出来ている、これを繰り返せば何万回でも数えられる。


 本堂内はストーブが焚かれ暖かい。昔はストーブなどなしで行なわれたそうだ。確かに凍える寒さだろうが、贅沢な言い方をすれば、温かさは眠気を充分に誘う。途中、千回に一回は気分転換に外へ出た。あぐらだが、座りっぱなしも腰にくる。

実は修行中は俗世から完全に離脱するため、携帯電話の使用は勿論、禁酒禁煙である。禁酒は我慢出来ても禁煙は厳しい。四国歩き遍路においてもそうだったが、修行や精進というものは、そもそも、「こだわり」や「習慣ごと」の多い人間ほど苦労する。或いは「好き嫌い」や自分のように、元々粗暴で品行方正とは程遠い人間ほど骨身に沁みる(笑。


▼ここから先は、ナイショの話しだが・・・
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taihei0440 at 14:22コメント(0)トラックバック(0)  この記事をクリップ! twitterでつぶやく  

2008年02月09日

 この日は宣言通り、寺暦650余年を誇る、本山修験宗 三重院における修行体験へと向かった。目からウロコの一言。修験道の由来は、平たく言えば「修行を体験する」だそうだ。正に納得、おっしゃる通り。

先に内容について、軽く触れておこう。
一泊二日から最長二十二日間の修行コースがあり、今回はおすすめの二泊三日を選んだ。一人から六人まで、行事のない日はほぼ年中受付てくれる。費用などの詳細は、副住職(22代目法院:村上圓信氏)が運営する、三重院ホームページ修行案内にてご確認を。参加前の不安ごとや、よくある質問以外の相談は、電話若しくはメールで丁寧に回答して貰える。
「百聞は一見にしかず、また百見は一験に及ばず」これを読まれて、ご興味の湧いた方、我こそも修行したい!と思われた方は、是非一度アクセスをしてみては。

以下、三重院HPより抜粋。
「修行の中心は一日に三回行われる勤行に重点を置いています。一見派手な滝や峰入りなども重要ですが、心を定めて仏道の片鱗であれ触れることが最も重要と考えています。」
と記されているように、動的な目に見えて分かる所謂「修行」より、むしろ地味に見えるが凛とした堂内においての、勤行こそが自分の心を映し出す本懐だという。
とはいえ、やはり分かり易い「体感」的な、滝修行などを目的とする人は多いであろう。かくいう自分もその一人だった。

いつものように時系列で後述するが、勤行に限らず礼節や改めて知った常識、配慮など、動的な修行よりも静的な修行こそが、満行したのちに副住職の言わんとする、仏道の片鱗とは何か?を、多少なりとも見出せた鍵となった気がする。


 さて、週末のガーラ湯沢行き新幹線は、家族連れでほぼ満席。三人掛けのC席に腰を下すと、隣りは手を繋いだラブラブなカップル。神仏に目覚めて以来、色恋沙汰を厳格に自粛して過ごしたこの一年。恋こそが我が生きがいだったのに、すっかり遠のいてしまった今の自分には、人の目も気にせずに、熱く寄り添う二人が少々羨ましくも思える。

 高崎からたった17分で目的の上毛高原駅。
こんな短い距離を新幹線に乗るのは初めてだ。「トンネル抜けたら、そこは雪国」を期待したが、白い雪は山肌に微かに残っているだけで、窓から見渡す民家の屋根にも見当たらなかった。 とは云うものの、同じ群馬でもトンネルを幾つも潜った分、高崎より気温は3℃ぐらい低く感じる。

三重院まで駅から歩いておよそ一時間。四国遍路以来、こんなに歩くのは久しい。案内図に描かれていた、目印のセブンが歩けど見つからない。時間はもう11時52分、ここで道を間違っていると、絶対12時の集合時間に間に合わない。前から歩いてきたお年寄りに、道を訊ねようとしたとき、「長生山・・」と書かれた赤いのぼりが目に飛び込んできた。真横まで来ていたのが分かり、胸を撫で下ろす。行事日に使用するのか、予備の駐車場はまだ真っ白な雪で覆われていた。


 どうも裏口から入ったようで、柵で塞がれた本堂裏へ出た。脇を通ると本堂内では月例行事が行なわれている最中だった。寺務所に入り、奥様らしき方にご挨拶。しばし待つと、メールと電話で事前に相談をした、副住職が見えられ受付を済ませる。
生年月日を書くと、「同い年じゃない?見えないね〜若く見えるよ」と気軽に話しかけて下さる。「いやぁ〜修行が足りんせいですわ」と答えておく。別にカレが格段に、老けているワケではない。山伏らしく、数々の修行を重ねた、極めて凛々しい顔立ちである事を、彼の名誉のために加筆しておこう(笑。

 ギシギシと古びた階段を登り、二階の寝床に案内され荷物を置く。同じく今日から修行するもう一人の男が遅れてくるらしい、一時まで待つように云われた。 独りになって部屋を見渡すと、倉庫兼用のようで荷物が無造作に積まれている。野地板丸出しの屋根裏部屋で、隙間から外の光が差していて、布団が二組畳んで置かれていた。

ストーブは見当たらず、当然だが寒い。「ここで寝るんか?これも修行か・・」と諦めていると、前日からの参加者が部屋に入ってきた。彼が言うには昨夜はマイナス8度で、凍えるような寒さだったらしい・・・。そやろうな〜やっぱし(笑。


f35a9ac9.jpg 法名授与「役氏:真淨」
三人の参加者が揃ったところで、本堂へ入り、始めに法名授与が行なわれた。
修験道では、「役氏(えんし)」とも呼ぶらしい。毛筆で和紙に包まれた、当代21世山主、村上晃道法院直々の命名による法名授与は、神々しさすら感じた。
1日でも弟子入りに変わりなく、俗世と離れて修行するため与えられる物で、名前は体を現すとも云い、重要な儀式である。それゆえ修行中はこの法名で呼ばれる事になる。
とは云え、現在の戒名「淨哲」よりも、幾分グレードアップしたような気分に勝手に浸って、自分にとっては大変有難い法名が頂けた。今回限りでは勿体無い。


その後、副住職から修行中における戒律(守るべきルール。専門的な言い方があったが忘れた)の説明があり、続いて修験道の歴史などを中心とした、非常に興味深い法話を聴かせて頂いた。
正に日本古来の民間信仰による、日本人の構築した神仏習合を今になお脈絡と受け継ぐ所以であった。その証拠が本堂内の様式に垣間見ることも出来る。神殿(社殿)ではなく、本堂と呼び、当然仏像や護摩壇があるかと思えば、紙垂(しで)や神鏡(しんきょう)もある。

▼修行開始!
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taihei0440 at 16:18コメント(2)トラックバック(0)  この記事をクリップ! twitterでつぶやく  
▼ごぉぉおおお〜〜〜〜〜ん勤行のお時間でっせぇ


毎度おいでやす。
【遍路と巡礼・神仏とえにしの旅】
Season3へようこそ

まぁ、ごゆるりと・・・

音が気に要らんお人は
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