昨日(24日の深夜)子の刻から、甲子祭は始まっている。
深夜に一人、大黒天一日千座行をこなして明けの25日、7時の湘南新宿ラインに飛び乗って目黒大圓寺へ。目黒駅に着いたのは9時半。大圓寺の甲子祭護摩法要は、手抜きしないご住職のポリシーで、一回に二時間強の法要が一日何度も行なわれる。第一回が10時なので、目黒駅で一服したあと足早に大圓寺へ向かった。

 大圓寺での甲子祭護摩法要の細かな模様は、前回書いたものとほぼ同じなので、ご興味ある方は、『〜甲子祭〜目黒大圓寺』の稿をお読みいただきたい。
今回は忘れずに、しっかり自宅から我が家のご本尊である、三面大黒天像を遍路用のザックに背負って持参した。ご住職に護摩の炎で祈祷していただくためである。

 しかし、何度観ても、この寺の護摩法要はご住職の気合が迸っている。もう、随分とご年配だとは思うが、漲る気合はこちらまで充分伝わってくるし、護摩を手伝う僧侶や、激しく和太鼓を打つ僧侶たちも、圧倒的なその気合に牽引されているように思う。
 護摩を終えて、最後に法話を聴かせていただけるが、その表情は長時間火炎の前に座していたせいで、両方の頬が真っ赤になり、声も擦れて時おり咳き込みながらも、善い話を聴かせて頂ける。

 勿論こちらも、護摩の煙が蔓延する狭い狭い堂内で、二時間も大声で経を上げ続けると、声が出ないぐらいガラガラになる。これは毎度の如く、目黒大圓寺での護摩法要のお土産みたいなモンだ。
人の為に祈る、人の為に加持祈祷する、人の為に護摩を焚く。・・・

 何も出来ない、まだど素人の今の自分は、多くの信徒と同じ境遇にいる。ご住職の力をお借りしながら、祈ることしか出来ない。
だが、どんなに個人的な修行を積んでも、素人は素人。その域を超えることはあり得ないし、特に密教の奥義は直接、師から学び取るしか手立てがない。一日も早く更に修行を重ね、修法をキチンと習って、自分自身のこの手で護摩を焚き、人のために祈りたい。今はそう、心底思う。


 さて、甲子祭を無事終えて、午後は我がグルである、小林阿闍梨の密教研究所を訪ねる。
 実は、小林阿闍梨の事務所を訪ねるのは今回が初めてである。そう、わが師とは、このインターネットを通じて知り合い、そのまま一瞬のえにし(仏縁)から、一気に高野山での得度式の際に、初対面を果たしたのである。
 といっても、最初から密教研究所、或いは高野山真言宗阿闍梨の一人として、ホームページを訪ねたわけではなく、きっかけは、自分が大好きな映画の一つで、皆さんも良くご存知の「マトリックス」だった。

 マトリックスを何度も観ることと、密教への思いを深めていくことが、同時に併走しだしたとき、ふと、(マトリックスって、密教っぽいな・・)と思い、それに関しての記述を、誰か書いてはいないか? などという、動機からたまたま師の運営する、密教研究所のサイト内の、一つの読み物に行き当たったのだった。

 この切欠は、それが直接今回得度した切欠ともなって行くのだが、まずそれを初めて読んだとき、「この人スゴいな!」「どんな人が書いてるんやろう?」と、興味津々になり、トップページに行ってみると、ナンと「密教研究所」という、まさにダイレクトなタイトルのサイトで、しかもイベント、ワークショップ、講座、とカテゴリー分けされた中に、たまたま「得度修行」の項目があった。

 得度は機会があれば、是非しておきたい! 折りしも、そう思っていた矢先だったので、ほとんど内容を読まずに申し込んで、高野山へ飛んだ。 というのが、今回得度した成り行きである。

 周知の通り、近年、ネット人口が急増し、ありとあらゆる情報がネット上に飛び交う。なにかしらネットを通じて知り合い、中にはビジネスをご一緒した事業家の方も居る。ビジネスにせよ、このブログのようなプライベートな記事を興すにせよ、もはやインターネットとパソコンがなければ、どうにもならない生活習慣が身についてしまっている。
 
 寺院や神社もほとんどが、立派なホームページを持っているし、このブログのリンクにもある、全国の遍路協会も沢山のホームページがあり、事前に情報収拾するのは非常に容易いこととなった。インターネットを介しての仏縁も神のご加護も、今の時代ならではのご縁(えにし)といえる。


 山手線浜松町駅から降りて、しばし歩いた静かなところに、小林阿闍梨の密教研究所はあった。事務所内には、日本ではあまり見かけない、本場チベットの仏像や曼陀羅が数多く安置され、さながら異国情緒の雰囲気を醸し出していた。
 結果からいうとこの日、小林阿闍梨と四時間近くも二人きりでお話しさせていただいた。
彼の密教に関連する知識たるもの、枚挙に暇がないほどの博識で、とても素晴らしい聡明な方である。きっと膨大なボリュームの書物も読まれている事は疑うまでもない。
また、彼の魅力はそれだけでなく、且つ非常にユーモアに溢れ、開放された自由な心を持つため、時に独特の様々な表情を見せて下さる。

 修行というより、趣味で元々、ネパールの山々を歩いていた彼は、サンスクリット語、英語にも精通し、現地で日本語学校の教師もされていたほどである。また、密教法具の工房や職人にも太いパイプを持っているため、以前は密教法具の輸入販売もされていた。
 が、彼の言葉を借りると、例えばスターウォーズのジェダイの騎士が使う、ライトセーバーを仮に他人が拾っても使い物にならぬように、密教法具は気(気孔)の分からない、感じない人が持っても、全く意味を成さない。という。

 それは例えば、護摩法要の際にも見られる、祈祷を行なう高僧が、指先で音を鳴らしたり、頭上から何か被るような所作をするのも、全ては気をコントロールする行為だと教えていただき、改めて自分自身も、気の重要さを認識した。
 初めから、密教法具の素晴らしさが分かった彼には、当初、誰にでも分かるものだと思っていたらしいが、購入者があまりにも(法具から発する気を)観じられない人が多いため、現在では表立って密教法具の販売はしていないという。

 その代わり、というか現在では、「気が分からなければ、印も護摩も法具も形だけ」という、自身の経験と結論から、彼の師の一人でもある、気孔老子 盛鶴延先生の顧問も受け持ち、密教研究所を訪れる修行者の気功法習得にも大いに尽力されている。

 また、最も興味深かったのが、以外にもタロットであった。
タロット占いなんぞに全く興味なんぞなかったが、全てのカードの持つ意味や絵柄が直接、密教や仏教に通じており、全てについて解説してもらえたが、とてもここでは書ききれないので、ご興味がある方は、密教研究所ホームページを是非、訪問して観て下さい。

 更に来る、2008年4月19日(土)〜20日(日)には、那須で護摩法要の合宿修行の参加を募集されている。参加者全員で護摩を焚き、マントラや瞑想しながら交流するイベントで、単にお寺の護摩法要に行くより遥かに、修法などの勉強修行になるのは間違いない。ご都合の合う方は、是非参加されてみてもいかがであろう。自分はまだ予定が立たないが、絶対行きたいと思ってる。


▼以下、直接リンクです。
『まんだらや』(密教研究所)
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