昨年末、歩き遍路を終え四国から大阪、そして京都へ立ち寄った際に、京都文化財の特別公開期間があるのを知った。
そして、嵐山花灯路に続き、10日間だけ開かれる東山花灯路と重なる、3月14日〜3月18日の期間中に、ふたたび京都を訪れようと決めていた。

そう、もう一度、金縛りのようなインスピレーションを受けた、あの東寺の二十一諸尊像から成る羯磨曼荼羅に会えるのだ。
正月の特別拝観に行けなかった、五重塔内部の真言八祖像も観たい。また観智院の愛染明王にも会いたい。

これを機会に、今度はゆっくり圓徳院の三面大黒天にも参りたい。回りきれなかった、寺院も訪れたい。ねねの道も歩きたい。
なんだか、チープで大変失敬な例えかも知れないが、まるで京都に住む、惚れたオンナにでも逢いに行く如く、今から胸が高まって仕方ないのだ。


 とは、云うもの、いざ計画を立てると、三泊四日でも行きたい場所全ては網羅できない。公開時間が、午前10時〜午後4時と限られており、遍路の納経時間より短い!(笑
社寺仏閣に限らず、京都には日本人にとって見所が多過ぎるのだ。甲乙付けがたいところを、泣く泣く優先順位をつけて消去法で絞っていくしかない。
それでもチャリンコでも借りて、走りまわそうかと思ってるが(笑。

きっとみなさんも、若い頃に修学旅行などで、訪れたことがあっても、やはり京都は歳を食ってからの方が、益々魅力は増していくのではなかろうか。



四十二回非公開文化財特別公開寺院一覧(公開箇所)
○相国寺 開山堂・法堂・瑞春院
 足利三代将軍義満が創建した臨済宗相国寺派大本山。南側に「龍淵水(りゅうえんすい)の庭」が広がる開山堂は、江戸時代に桃園天皇の后・恭礼門院(きょうれいもんいん)の黒御殿を移築したもので、開山・夢窓国師(むそうこくし)像を祀り、円山応挙筆の小犬の杉戸絵が残る。
法堂(重文)は慶長10年(1605)に豊臣秀頼が再建した現存する日本最古の法堂。狩野永徳の子・光信筆の壮麗な天井画「蟠龍図(ばんりゅうず)」は、堂内で手を打つ反響音が龍の鳴き声のように聞こえ、通称「鳴き龍」と呼ばれる。東照宮にある物と似ている。

【開山堂】
( 開基足利義満像、開山夢窓国師像、円山応挙筆襖絵・杉戸絵、枯山水庭園、後水尾天皇宸筆額「圓明」)
【法堂(重文)】
(現存する法堂の中で我が国最古のもの、狩野光信筆天井画「蟠龍図(ばんりゅうず)」)

【瑞春院】
相国寺の塔頭寺院。瑞春院の雛僧であった少年期の思い出をもとにした水上勉(みずかみつとむ)の直木賞受賞作『雁(がん)の寺』で知られる。
小説の由来となった襖絵が方丈に残り、円山派の画家・上田萬秋(ばんしゅう)の「雁の絵」や今尾景年(いまおけいねん)の「孔雀の絵」などが往時を偲ばせる。
夢窓国師の作風を取り入れた室町時代風の庭園には、池のほとりに表千家不審菴写しの茶室「久昌庵(きゅうしょうあん)」が佇み、水滴の反響音を楽しむ水琴窟(すいきんくつ)が澄んだ音色を奏でている。
(本堂襖絵 上田萬秋筆「雁の絵」、今尾景年筆「孔雀の絵」、書院襖絵 鈴木松年筆「古松の絵」、南庭「雲頂庭」、北庭「雲泉庭」、水琴窟)


○東寺 五重塔・灌頂院(京の冬の旅・初公開)
【五重塔(国宝)】
 平安京造営の際、国家鎮護のため創建され、のちに弘法大師空海に下賜された東寺は、真言宗総本山であり密教美術の宝庫。金堂(国宝)、講堂(重文)とともにそびえる五重塔(国宝)は、高さ55メートルの国内最高の木造の古塔。現在の塔は正保元年(1644)徳川家光が古来の工法で再建、約360年前の姿をとどめている。特別公開の初層内部は、大日如来に見立てた心柱を守るように四仏や菩薩像を安置し、柱や天井の極彩色の文様が美しく荘厳である。

【灌頂院(重文)】
 灌頂院(重文)は空海が創建の際に最初に構想した建築物のひとつで、密教教義上、重要な道場。現在の建物は寛永11年(1634)の再建で、内部は両界曼荼羅をかけるようになっており、壁に真言八祖像などが描かれる。
正月8日から14日までの7日間、中国・唐に習い始められた「後七日御修法(ごしちにちみしほ)」が営まれ、国家安泰や世界平和を祈願する。
今回の特別公開では、密教の奥義を伝授する儀式「伝法灌頂(でんぽうかんじょう)」のしつらえを特別展観。

(正月の「後七日御修法」をはじめ、伝法灌頂が行われる真言密教の重要な道場 壁面に真言八祖像、伝法灌頂のしつらえ特別展示)


○智積院
真言宗智山派総本山。豊臣秀吉の子鶴松の供養のための寺である、祥雲寺の跡地に、江戸時代に玄宥僧正(げんゆうそうじょう)が、紀州根来山(ねごろさん)の塔頭智積院を再興した。
収蔵庫には、祥雲寺を飾った長谷川等伯一門の絢爛たる障壁画「楓図」(国宝)、「桜図」(国宝)などが残る。
中国の廬山(ろざん)をかたどった庭園(名勝)は、石組や植込みが織り成す深山のような景色が美しい。特別公開の宸殿は、京都画壇を代表する画家・堂本印象の華やかな襖絵で飾られている。

(堂本印象筆宸殿襖絵、長谷川等伯筆「十六羅漢図屏風」、一の谷合戦図、土田麦僊筆「朝顔図」)


○知恩院 三門
 法然上人の草庵に始まる浄土宗総本山のお寺で、特別公開の三門(国宝)は元和7年(1621)徳川二代将軍秀忠により建立された。
高さ約24メートル、横幅約50メートル、屋根瓦約7万枚に及び、木造の門では世界最大規模を誇る。
楼上内部には、宝冠釈迦如来像、十六羅漢像が並び、柱や天井を極彩色の天女や飛龍が彩る。
また、知恩院七不思議の一つ・白木の棺と、三門を建立した五味金右衛門(ごみきんえもん)夫妻の像を安置。楼上からは京都市内を一望できる。

(徳川二代将軍秀忠により建立された、わが国最大規模の楼門(国宝)、楼上内部(宝冠釈迦如来・十六羅漢像・鏡天井や柱に極彩色の絵)、知恩院七不思議の一つ 五味金右衛門夫妻像「白木の棺」)


○ 知恩院 経蔵・勢至堂 【京の冬の旅・初公開】
 経蔵(重文)は元和7年(1621)の建立。内部の八角形の輪蔵に『宋版大蔵(一切)経』約六千巻を納め、これを一回転させれば、全巻を読誦するのと同じ功徳を得られるという。
天井には極彩色で描かれた、飛天や鳳凰が絢爛華麗に舞う。
勢至堂(重文)は知恩院の旧本堂で、享禄3年(1530)再建の現存する知恩院最古の建造物。
この地が、法然上人の亡くなった場所であり、知恩院発祥の地で、上人の本地身とされる、勢至菩薩像(重文)を祀るため勢至堂と呼ぶ。


○六道珍皇寺 【京の冬の旅・初公開】
 平安時代に弘法大師の師・慶俊僧都(きょうしゅんそうず)が開いたお寺で、お盆の精霊迎え「六道まいり」で名高い。
薬師堂には平安時代の作の本尊薬師如来坐像(重文)を祀り、閻魔(えんま)堂(篁堂)には、気迫に満ちた閻魔大王像と小野篁(おののたかむら)像を安置する。
平安朝の官僚・小野篁は、夜は冥府の閻魔王宮に仕えたといい、冥界への入口と伝わる「冥土通いの井戸」が庭に残る。
地獄絵「熊野観心(かんしん)十界図」、「珍皇寺参詣曼荼羅図」や播磨の赤松家ゆかりの寺宝が特別展観される。

(伝教大師作薬師如来坐像(重文)、地獄絵「熊野観心十界図」、珍皇寺参詣曼荼羅図、 赤松家ゆかりの寺宝展観)


○六波羅蜜寺
 天暦5年(951)に空也(くうや)上人が開いたお寺で、西国三十三ヶ所観音霊場第17番札所。
この地は平安時代には平家一門の屋敷、鎌倉時代には六波羅探題が置かれ、史跡として名高い。秘仏・本尊十一面観音像(国宝)を祀る、本堂(重文)は鎌倉時代の様式を残す建物。
宝物館は優れた仏像彫刻の宝庫であり、口から6体の阿弥陀仏を出す、空也上人像(重文)や、平清盛像(重文)、さらに今回は貴重な「空也上人ゆかりの寺宝」が特別展観される。

(空也上人ゆかりの寺宝(空也上人の画像・空也上人が使っていた鹿の角の杖))


○立本寺 【京の冬の旅・初公開】
 日像(にちぞう)上人により、元享元年(1321)に開創された日蓮宗京都八本山のひとつ。
境内に本堂・祖師堂・刹堂(せつどう)が、コの字型に並ぶ配置は、日蓮宗伽藍の典型である。
本堂の須弥壇(しゅみだん)後壁には、江戸中期の絵師・渡辺始興(しこう)が大画面に描いた「十六羅漢図」が残る。
江戸時代建立の客殿は6室に分かれ、仏間が背面に張り出す日蓮宗客殿の様式を伝えており、客殿庭園(京都市指定名勝)は、築山に石を組み、灯籠や五輪塔などを添えた緑豊かな庭園である。