06*03出発
笑えるぐらい、外はまだ真っ暗けもいいとこだ。 全く足元が見えない。 宿からR193号まですぐだ、自販機の灯りを目指して歩く。
国道に出たが、やっぱり真っ暗け。山ん中に居る事を忘れてた。 ヤバい早速、大型が飛ばして来やがる、タヌキみたいに引かれそうだが、今更しまい込んだライトをほじくり出すのは面倒クサ過ぎる。 遠く街灯を目標に、白線を踏みながら歩こう。

もういいんだ、急がなくても。もういいんだ、暗くなるまで歩かなくても。もういい、何もかも全部終わったんだ。


さらば四国よ さらば青き海よ 紅の山よ さらば川よ谷よ
有難う小鳥たちよ 野に咲く花よ 有難う四国の人々よ
熱き血潮の貴方たちから、沢山頂いた暖かな心は決して忘れない

吐息白く澄んだ空気に、ひんやり冷たく頬伝う涙。もう堪える必要ない、止めどなく溢れ出して止まらない、地面に大粒の涙が何メートルにも渡って零れ落ちた。



車遍路では、決して味わえなかった。数え切れない感動が込み上げる。本当に歩いて良かった、歩かせて頂いて良かった。有難うお大師さん、神よ御仏よ有難う御座いました。 次から次へと湧き上がる感動が、尽きる事のないまま、己との闘いの幕は今閉じようとしている。


道の駅塩の江に着いた。ハーレーの会長に満願報告の、絵葉書を出す。 高松行きのバス停は向かい側にあった。 運転手たちは暖かな事務所で休んでる。中に誘われたが、寒さには慣れている。それに涙目は見られたくない。一人、表のベンチでタバコをくゆらす、吸い貯めしておかないとな。 バスのタイヤやホイールを叩いて、点検しているのを初めて見た。そもそもバスなんて、滅多に乗った事がない。子供の頃は地下鉄、大人になれば車だ。

出発までずっと、開放されていた車内は、寒々としている。他に乗客は学生が二人だけ。

06*45
始発の高松行きバスは、動き出した。