6時起床。目の前にある十三番 慈眼寺(じげんじ)で、一人朝の勤行を果す。昨日、参拝したがせっかくこれだけ近くに泊まれたのも、何かのご縁。無計画な旅もいいものだ。

美味しい朝食をいただいてる間、女将はずっと傍に座ってご飯をよそってくれた。
「おかわりもっと如何ですか?」の心遣いに、断ることが出来ず、お新香一切れと、のり一枚しかないのに、三杯目をもらってしまった。


和顔施で宿をあとにして、最終日を気を引き締めて巡拝する。


この日、もっとも印象深いのは、三十二番 法性寺(ほうしょうじ)と三十一番 観音院(かんのんいん)。それぞれの奥院だった。

ハッキリ云って、命がけ。
気を抜くと、断崖絶壁から落ちて確実に死ぬ。そんな激しい道だった。


三十二番 法性寺の奥の院には、鎖を掴んで岩肌をよじ登らなければならず、ここまで役に立った金剛杖も邪魔になって、岩山にもたれさせるように置いて登った。そこはもう別世界。もっとも気高いこの山頂に、正徳二年(1712年)安置の鍛造の大日如来がいらした。
わずか、人一人分の両脇は断崖絶壁。しかし、恐怖を忘れ正座をして拝んだ。お賽銭が足元に置かれ、沢山の数珠やカラーストーンブレスレットが大日如来の腕に巻かれていた。自分も左手にしていた、数珠を置いてきた。

さぁ、降りようと振り向いた瞬間、最大の恐怖に襲われる。本当に一歩右や左に足を踏みそこなうと、まともな身体では帰れなさそうだ。
慎重に鎖をつかみ、こわごわ降りようとしたとき、鎖が左右に振られ、岩壁の下に置いて来た金剛杖に当たって、崖に落としてしまった!

思わず声を出してしまったが、とにかく降りることが先決。なんとか、岩壁から降りて山道へ立ち、金剛杖を落とした方へ探しに行って見ると、なんと!木の枝にひっかかっているではないか!しかも、手の届く目の前に! 
この時こそ、お大師様や大日如来を始め御仏のご利益を感じた事はなかった。

感謝 合掌!



▼三日目の巡拝ルート
▼恐怖の三十一番 観音院 西奥の院
十六番 西光寺(さいこうじ)⇒十七番 定林寺(じょうりんじ)⇒十八番 神門寺(ごうどじ)⇒十九番 龍石寺(りゅうせきじ)⇒二十番 岩之上堂(いわのうえどう)⇒二十一番 観音寺(かんのんじ)⇒二十二番 童子堂(どうじどう)⇒二十三番 音楽寺(おんがくじ)⇒三十二番 法性寺(ほうしょうじ)⇒三十一番 観音院(かんのんいん)⇒三十三番 菊水寺(きくすいじ)⇒三十四番 水潜寺(すいせんじ)結願

以上、12箇所巡礼