ブラックジャックに仏道を観る。

世界に名を轟かす神業の如き、天才的な超一流の外科医でありながら医師免許を持たず、裏稼業として法外な手術料を要求する。

然し時に、子供が握りしめた僅かなお金や、或いは無料奉仕で誰も真似出来ぬ大手術を成功させることもある。彼は決して慈善家ではない。寧ろ、『慈善を売り物にする人間は虫が好かないんだ。』と云う、セリフを吐くこともある。

然れども、彼の生き方はどう見ても菩薩である。
金の亡者の振りをしてるが、多額の報奨金で贅沢三昧をするわけでもなく、女を囲うわけでもない。飲み屋をやってる金のないものには、タダで一か月飲ませろと云ったり、恩人を救うため億を注ぎ込み新薬を開発したり、老人ホームを救済したりもする。医者になるべきではない、本当の金の亡者はごまんといるのだが。

コミックは世界に翻訳され、世界人口の60人に一人が手にしている医療漫画の金字塔である。世界中の名医から見放された患者たちの、最後の命の切り札。それが、ブラックジャックである。、、今書いて思ったが、それじゃまるで医療界の聖天様ではあるまいか。むむむ、そう考えると更なる納得がゆく。彼の要求する高額報酬は、聖天様に捧げる天爵と同じではないか、、、。この話しは別の稿にて。

『ブッダ』と連載時期を共にした、『ブラックジャック』に手塚治虫師が仏教色を意図的に散りばめたかどうかは知り由もないが、同時期に自ら代表を務めていた、虫プロ商事・虫プロダクションの倒産・多額の負債を抱えたこと、作家としても低迷を続け自ら"冬の時代"と回想した心境の中で作り上げた作品に、自然と権現した結果なのかも知れない。

あと二週間ほどで46歳になる、私が子供の頃の世代漫画はこういった漫画と云えども素晴らしい作品が多い。昨年あたりから、伊達直人と云った俗名で寄付をする人が増えて話題となったが、あれもタイガーマスクと云う漫画の主人公だ。

彼も亦、菩薩道を歩む仏である。
虎の穴と云う悪役レスラーを育成する厳しい掟の組織の出身ながら、応援してくれる孤児院の子供たちのため、裏切りの烙印を押されながらも反則技を使わず、続々と送り込まれる刺客と血みどろの試合を繰り返し、その度に傷付きながらもファイトマネーを名を伏せて孤児院へ届け続ける。最終回(アニメ)は涙なしには観られない名作である。どちらも知らない方は是非、折があれば二作品に触れてほしいと思う。

これが伊達直人の名を騙って、(いや、騙してんじゃないけど)善意のお金を無記名で届けたいと云う人たちの思いであろう。布施(この場合は財施)の本懐は、『何を施したるを忘れる事。施したこと自体をも忘れざる事なお良し。』である。

人は人を傷つけたことは忘れ易い。
人は人に傷付けられたことは忘れ難い。

人に施したるを忘れ、人を傷つけたことは忘れなきよう。


人は誰しも仏になれる。生きて仏道を歩むものを菩薩と云う。
僧侶も在家信者と同じく等しく、仏教を学び神仏を信じる信徒である筈なのだが、頭を剃って寺に住んで経を流暢に読み、寝る前に目を通した本を引用して翌日説法垂れるだけのリーマン坊主より、信徒でなくともよほど仏教的な生き方は出来るのである。

即ち、仏道とは生き様であり、死に様である。
あなたの行こうとする未来が涅槃への死に様であり、その一歩一歩となる今日・明日が、そのまま仏道であり、生き様となる。

それではまた。
本日もおおきに。
ご高覧に感謝致します。

全世界核廃絶武装解除天下泰平
全人類共尊共助共慈共悲共愛
厭離穢土欣求密厳淨土悉地成就

編集後記
南無大聖大仁慈歡喜雙身天王
感謝合掌 
北斗法蓮 百拝